主催: 日本霊長類学会・日本哺乳類学会大会
ニホンジカの枝葉の採食痕を利用した生息状況の評価は,林業関係者などが簡易に広域で調査可能であることから北海道などで試行されている.しかし,長野県のようにニホンジカとニホンカモシカが同所的に混在する地域では,枝葉の採食痕だけで加害種を判別することは困難である.そのため,ニホンカモシカによる影響が出にくい樹木の剥皮採食と,ニホンジカが集中的に冬季に採食を行うササ類に注目して,ニホンジカの生息状況を評価することを試みた.これまでに,冬季の主要食物であるササ類の採食程度を指標化したササ類の健全度と,ヒノキなどの主要造林樹種や天然木の剥皮採食の嗜好性と発生する立木サイズから,ニホンジカの生息状況を推定してきた.そこで,これまでの結果を基にカモシカが混在する地域でも利用可能と考えられるササ類,および樹木の剥皮採食痕など利用したチェックシート案を作成した.今回,林業関係者を対象としてチェックシートを利用した生息状況調査を実施し,その効果を検討したので報告する.