霊長類研究 Supplement
第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会2013年度合同大会
セッションID: P-219
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ポスター発表
大阪府におけるアライグマ生息状況の経年変化
*幸田 良介*虎谷 卓哉
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抄録

 特定外来生物であるアライグマの分布と被害は全国各地で拡大しており,大阪府においても防除実施計画が策定されている.しかしながら,現在のところ,効果的・効率的な防除推進に欠かせないアライグマ生息状況に関する情報が十分に整理されているとは言い難い.そこで本研究では,捕獲時に収集されている個体情報と農業集落へのアンケート情報という 2つの既存データを活用し,大阪府域のアライグマ生息状況の経年変化を明らかにすることを目的とした.
 捕獲個体情報については捕獲数や捕獲場所のほか,体重,性別,妊娠率及び推定出産数の項目を,アンケート情報については生息の有無,出没頻度及び被害強度の項目を利用した.捕獲場所とアンケートを得た農業集落の位置座標を入手し,捕獲数については 3次メッシュごとに集計した.さらに各項目について IDW法による空間補間を行い,大阪府全域における空間分布を解析し,経年変化を調べた.
 空間分布の解析の結果,アライグマの生息範囲は大阪府ほぼ全域に広がっており,北部,東部及び南部に出没頻度と被害が大きい地域があり,それらの地域で捕獲数も多くなっていた.アライグマ捕獲数と捕獲のあったメッシュ数は,2005年から 2006年にかけて急増していたものの,それ以降は微増にとどまっており有意な増加はみられなかった.また,性比や体重については地域ごとの差はみられるものの経年的に継続するような明確な傾向はなく,全域での平均値にも近年の大きな変動はみられなかった.一方,2012年には推定出産数がほぼ全域で増加していた.以上のことから,大阪府におけるアライグマ生息状況は近年ほぼ一定の状態で保たれているものの,今後急増する可能性があり,継続的な捕獲の必要性が示唆された.今後はわな設置場所や設置期間についての情報を収集し,密度指数である捕獲効率を算出することが必要である.

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© 2013 日本霊長類学会
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