霊長類研究 Supplement
第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会2013年度合同大会
セッションID: HP-8
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中高生ポスター発表
粘菌変形体N培地条件に応じた輸送管ネットワークの形成
*藤戸 竜司*石原 武*足立 琢真*光實 想支*越智 亮介
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抄録
 粘菌変形体は,輸送管ネットワークを形成して酸素や栄養分を巨大なアメーバ状の細胞全体に供給している.また,細胞内部の原形質流動が神経系の代わりに情報伝達を担っているとも考えられている.本研究では,さまざまな培地条件が細胞の形成する輸送管ネットワークに与える影響を調べた.実験では,素寒天培地上で正三角形(一辺6cm)の重心に置いた細胞から,3つの頂点に配置した餌(オートミル)に対して形成するネットワークを比較観察した.培養条件の設定は,忌避物質である塩類を利用し,その濃度を変えたり,素寒天培地の濃度を変えたりして行った.忌避物質は,細胞と餌の中間点に配置することで,細胞の忌避行動を観察した.その結果,低濃度のNaCl・KCl・CaCl2の溶液では,同時に 3点の餌をつなぐ放射状ネットワークを形成した.つまり,忌避物質がネットワーク形成に影響することはなかった.しかし,これらの物質濃度を 30%濃度に上げると,細胞は忌避物質を迂回する経路で行動し,3点の餌をつなぐ環状ネットワークを形成した.忌避円のサイズは,忌避作用の強度を現すと考えられた.また,培地濃度の違いは,細胞の広がり方に影響を与えることが推定された.こうしたことから,細胞のネットッワーク形成は,環境条件の影響を受け,その形態は最短経路による情報伝達ネットワークを表現していると考えられた.
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© 2013 日本霊長類学会
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