抄録
盈進中学高等学校環境科学研究部では,中四国水質38年連続ワースト1の芦田川に生息する絶滅危惧種1A類及び種の保存法指定種であるスイゲンゼニタナゴ生息環境の保全・清掃活動を26年間続け,分布調査や生息地付近での産卵母貝調査・水生生物調査も継続してきた.また,同時に自然繁殖や人工繁殖も試行錯誤を繰り返しながら進め,飼育下での遺伝子バンキングも進行している.地域住民への学習会や小中学生への学習会や体験会も重ね続けることで,広く地域の人たちへ啓蒙活動も行っており,3年前には「スイゲンゼニタナゴを守る市民の会」を設立し,地域住民と連携したパトロール活動などに発展させることができている.ニュースレターの発刊も29号を数えるまでになった.
また,広島県唯一の自生地である福山市千塚池でのオニバスの観察調査や,芦田川や松永湾に注ぐ本郷川河口域の干潟の希少種などの生息状況確認等や,また地域紙を利用した広報活動など,多岐にわたって備後地域,特に芦田川水系の自然の大切さを伝え続けている.学識者・行政・地域住民・他県の自然保護団との交流を深め,芦田川の自然の貴重さについて一層の理解が定着するように活動を持続している.