霊長類研究 Supplement
第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会2013年度合同大会
セッションID: MS-25
会議情報

ミニシンポジウム
外来種対策における探索犬の活用の現状と課題
*河内 紀浩*中井 真理子
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

 外来生物の防除を目的とした探索犬の導入が各地で行われている.探索犬の育成には,現場で探索犬を運用するハンドラーが技術を体得することが必要不可欠であり,事例ごとにユニークな特徴をもっている.しかし,このような性質上,事例間の横のつながりに乏しく,情報交換する機会が少ない.本集会では,探索犬の育成と導入に携わる者が各事例を紹介し,成功した点や失敗から学んだ点などについて情報を共有することを目的とする.また,探索犬の現場導入における課題を整理し,今後の展望について議論したい.

演題1:アライグマ探索犬の活用事例(北海道)
  中井真理子(北大院・文)・山下國廣(軽井沢ドッグビヘイビア)・
  福江佑子(NPO法人生物多様性研究所あーすわーむ)・池田透(北大院・文)
 本発表では,アライグマ探索犬育成と訓練の過程,さらに訓練中の失敗から学んだことなどを紹介する.日本で実用化するにあたり,他事例の調査結果や犬種の特性などの情報を基に,日本で入手可能な狩猟犬の特性を持つ犬種群から甲斐犬を選定した.育成方法には,動物行動学・学習理論に基づくモチベーショントレーニングを採用した.現在では,野生のアライグマを探索できる実用段階まで達している.しかし,訓練の途中で,意図しない行動を強化してしまう例もあり,修正に時間を要したことがあった.訓練の修正の過程や実践の成果,今後の展開について紹介する.

演題2:小笠原諸島におけるノヤギ排除を目的とした犬の活用事例(東京都)
  滝口正明(一般財団法人自然環境研究センター)
 東京都が実施した小笠原諸島弟島での植生回復事業において,島内に残存するノヤギを探索するために探索犬(ボーダーコリー)を導入した.またノヤギの排除作業が完了し,根絶を確認する段階においても探索犬を使用した.今回は,探索犬の導入に当たって留意した事項と使用実績を紹介する.

演題3:マングース探索犬の活用事例(沖縄島・奄美大島)
  河内紀浩・渡邉環樹(八千代エンジニヤリング株式会社),
  橋本琢磨・後藤義仁(一般財団法人自然環境研究センター),
  福原亮史・東江純之介(株式会社南西環境研究所)
 沖縄島や奄美大島でのマングース対策事業では,マングース探索犬を導入している.導入した探索犬は主に生体探索を行うテリアと,糞探索を行うシェパードで,これらの 2種は体の大きさや性質が大きく異なることから,探索手法にも違いがある.これまでの育成方法や探索実績,根絶に向けた探索犬を使用した取り組み,今後の展開などを紹介する.

著者関連情報
© 2013 日本霊長類学会
前の記事 次の記事
feedback
Top