霊長類研究 Supplement
第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会2013年度合同大会
セッションID: C1-3
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口頭発表
ボノボとチンパンジーの分岐再考-コンゴ川形成史の構築-
*竹元 博幸*川本 芳*古市 剛史
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抄録
 コンゴ川はその右岸北側に生息するチンパンジー(Pan troglodytes)と左岸南側に生息するボノボ(Pan paniscus)の分布域を隔てる明瞭な地理的障壁である.多くの遺伝学的研究はコンゴ川の成立を第四紀初期と仮定して,遺伝的に推定されるチンパンジーとボノボの分岐年代(1Ma (100万年前)から2.6Ma)と対応させてきた.コンゴ川の出現がボノボとチンパンジーの共通祖先の分布域を分断し種分化を促した,という考えである.しかし,地理的障壁としてのコンゴ川の出現を新第三紀 /第四紀境界に置く地質学的証拠は見当たらない.
 コンゴ盆地中央部は露頭やボーリング地が少なく,地層情報に乏しい.しかし近年,音波探査や重力異常,海底堆積物コア,マントルトモグラフィー等の報告が増え,その過去の姿を推定するための情報が増えてきた.コンゴ川海底堆積物および中央アフリカ地域のテクトニクスを統合し,コンゴ川の形成過程について考えてみた.
コンゴ川海底扇状地の堆積物は,中生代にまで遡る非常に古い起源を持つ.コンゴ川本流は,始新世/漸新世境界(34Ma)前後にほぼ現在に近い形になった可能性が強い.16Ma以降の堆積速度は大きく,多数の支流を集めた大河川になっていた.地溝帯の火山活動と同時に起こった東アフリカの上昇開始(45Ma~33Ma)とコンゴ盆地の沈降が大きな影響を与えたと考えられる.チンパンジーとボノボの共通祖先はコンゴ川の右岸にいた可能性が高い.では,ボノボはどのようにしてコンゴ川の左岸に分布するようになったのか.おそらくコンゴ川の流水量が極端に減少した時期 (1 Maあるいは1.7Ma)に,上流域の浅瀬を徒渉したボノボの祖先集団がいたのだろう.今回述べるコンゴ川形成のシナリオは,ボノボとチンパンジーの問題にとどまらず,人類進化やアフリカ森林性哺乳類の分布の問題に深く関係するものと思われる.
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© 2013 日本霊長類学会
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