霊長類研究 Supplement
第31回日本霊長類学会大会
セッションID: P51
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ポスター発表
現生霊長類における踵骨からの体重推定にむけて
鍔本 武久
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抄録

【背景】踵骨は適度に扱い易いサイズで,よい状態で化石として発見される確率が高い.また,容易に同定できる特徴的な形態をしていて,行動形態をよく反映している.そのため,霊長類の骨格化石の中では比較的よく研究されている.また,化石霊長類の体重は,古生態の研究に重要な要素である.【問題点】しかし,距骨サイズと化石動物の体重との関連性を調べた研究は,歯牙のそれと比べるとまだ少ない.【目的・着眼点】踵骨化石からその化石霊長類の体重を推定するために,現生霊長類・ツパイ類の距骨サイズの計測をおこなって,距骨サイズと体重との関係を検討した.【資料と方法】標本は霊長類14種24個体およびツパイ類1種2個体,すべて大人の個体.体重値は個々の標本の体重データを使用.計測部位は12箇所.自然対数変換したそれぞれの計測値と動物の体重との相関関係を,ステップワイズ重回帰分析および単回帰分析により検討.【結果・考察】ステップワイズ重回帰分析の結果,「後距骨関節面の幅」と「後距骨関節面の部分の高さ」の二つのパラメーターを使用するのが最も妥当であった.単回帰分析では,予測値の標準誤差(SEE)を基準として用いたところ,「後距骨関節面の幅」を使用するのが一番妥当であり,二番目に妥当なのが「後距骨関節面の部分の高さ」である,という結果になった.つまり,距骨との関節面の部分が体重と最も相関があることがわかった.霊長類を対象とした場合の距骨を用いた同様の研究では距骨全体の大きさと体重との相関が良かったが,踵骨では踵骨全体の大きさと体重との相関はあまり良くなかった.

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© 2015 日本霊長類学会
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