霊長類研究 Supplement
第31回日本霊長類学会大会
セッションID: A9
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口頭発表
フサオマキザルにおける記憶内容のメタ認知
―課題負荷操作の効果―
高木 佐保藤田 和生
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抄録
メタ認知とは自身の認知状態をモニターし制御する働きである。すでに霊長類は短期的な記憶痕跡のメタ認知を持つことが明らかにされている(Fujita, 2009; Hampton, 2001; Smith, Shields, Allendoerfer, & Washburn, 1998)。しかし、それらはいずれも記憶痕跡の有無や強度を問う課題であり、記憶の内容に関する検討はこれまで全くおこなわれていない。これに対しヒトは、色は憶えているが形は憶えていない、などの複合記憶の個別内容をモニターし報告できる。メタ認知の進化を検討する上で、記憶内容のメタ認知がどのような動物種で可能かを調べることは重要である。本研究では、図形の形状(what)と位置(where)の見本合わせによる複合課題を用いて、霊長類のメタ記憶が記憶痕跡の有無に止まらず、その詳細な内容の認知をも包含しているかを2頭のフサオマキザル(Cebus apella)を用いて検討した。この複合課題では、10箇所の見本提示場所のうち1箇所に見本刺激を呈示した。遅延の後に、what課題、where課題、及び両方を答えるcombo課題がランダムに出現し(Forced試行)、一定の割合でwhat課題とwhere課題どちらに進むかを選択できた(Selectable試行)。もしフサオマキザルが記憶の内容を含めたメタ記憶を持ち得るのであれば、以下の2つの予測が成立する。1:Selectable試行で選択した課題の正答率は、Forced試行での同じ課題の正答率よりも高い。2:Selectable試行では、Forced試行で正答率の高い方の課題がより多く選択される。以上を調べた結果、いずれのサルもそれぞれ片方の予測と一致した傾向を示したが、両方の予測を満たす結果にはならなかった(実験1)。実験1では、what/whereの難易度は個体の自発的傾向に依存しており、人為的な操作は行っていない。実験2では遅延時間に妨害刺激を入れることでwhatとwhere課題の難易度の人為的な操作を行った。妨害刺激が形状情報に強く作用する場合と、位置情報に強く作用する場合を設けて、選択する課題の種類がそれに応じて変化するかどうかを調べた。結果及び考察は当日発表する。
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© 2015 日本霊長類学会
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