霊長類研究 Supplement
第31回日本霊長類学会大会
セッションID: A12
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口頭発表
ワオキツネザルのオスの分散様式
市野 進一郎相馬 貴代宮本 直美小山 直樹高畑 由起夫
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抄録
(目的)ワオキツネザルは、10頭から15頭ほどの母系複雄複雌群を形成する昼行性原猿である。群れで生活する原猿類は、群れの社会的性比(オスの数とメスの数の比)がほぼ等しいという特徴をもつ。本研究では、ワオキツネザルのオスの分散様式と社会的性比がどのように関連しているかを明らかにする。(方法)マダガスカル南部のベレンティ保護区では、14.2haの主調査地域に生息するワオキツネザルの個体識別にもとづく継続調査がおこなわれている。本研究では、1989年から2009年の間の20年間に収集された人口学的資料を用いた。(結果と考察)20年間にオスの加入は148頭(加入直後に死亡した個体を加えると149頭)観察された。148頭中、単独で移籍したオスは44頭(29.7%)、2頭で移籍したオスは58頭(39.2%)、3頭で移籍したオスは15頭(10.1%)、4頭で移籍したオスは4頭、5頭で移籍したオスは10頭、7頭で移籍したオスは7頭、何頭で移籍したか不明だったのは10頭だった。このように、約7割のオスが同じ群れから複数頭で移籍していた。単独オスやオスのみの集団は特定の季節にのみ観察され、群れを移出したオスは数ヶ月で新たな群れに加入した。観察された加入オス149頭の出身群をみてみると、少なくとも90頭は主調査地域内かその近隣の群れから移籍しており、全体の60.4%に相当していた。以上のことから、ワオキツネザルのオスの分散様式には以下のような特徴がみられた。(1)複数のオスがともに同じ群れから移籍する平行分散(parallel dispersal)の傾向が強い。(2)群れから移出した後の単独オスもしくはオスグループの状態は短く、短期間のうちに他の群れに加入する。(3)近隣の群れへの移籍が多く、周辺の群れの状況に応じて、頻繁な移籍を繰り返す。
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© 2015 日本霊長類学会
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