霊長類研究 Supplement
第31回日本霊長類学会大会
セッションID: A21
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口頭発表
音のリズムの特徴がチンパンジーのタッピングや自発的な動きに与える影響
服部 裕子
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抄録
歩きながら音楽を聴くと自然に歩調があうといった様に、ヒトは自分の動きを外部のリズムに自発的にあわせる傾向があることが知られている。これまでの研究から、チンパンジーにもそうした傾向があることが示されている。電子キーボードの2つのキーを交互にタッピングさせている間に、等間隔の音を提示すると、提示したリズムが自発的なタッピングの速度に近い場合、タッピングのタイミングが音のリズムに引き込まれる事がわかっている(Hattori, Tomonaga and Matsuzawa, 2013)。本研究では、等間隔の音のリズムにアクセントを加えることで、ヒトにはよりはっきりしたリズムに感じられる音刺激を提示した場合、タッピングが自発的に引き込まれるのかを調べた。音刺激とタッピングのオンセットの違いを分析した結果、先行研究と同様に、タッピングが音のリズムに間断的に引き込まれるという現象がみられた。さらに、1個体のチンパンジーについて、タッピング課題をおこなっていない時にもリズムにあわせて体をゆらす行動が観察された。ビデオ分析から、リズムの速さが動きに影響を与えている可能性が示唆される。しかしながら、プレイフェイスなどのポジティブな感情表現はこうした行動の間には確認されなかった。これらの結果から、等間隔のリズム音だけでなく、アクセントが加わった複雑なリズム音もチンパンジーの動きに影響を与えることが示された。ヒトが音楽を作る際に取り入れてきたリズム特性の一部は、ヒト以外の霊長類にも影響を与えると思われる。今後、更に複雑なリズムを提示して反応を調べることにより、他の霊長類にとって認識できる(できない)リズムの特徴について検討をすすめたい。
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© 2015 日本霊長類学会
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