霊長類研究 Supplement
第31回日本霊長類学会大会
セッションID: B12
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口頭発表
房総半島におけるニホンザルと外来アカゲザルの交雑状況評価
川本 芳白井 啓直井 洋司萩原 光白鳥 大祐川本 咲江濱田 穣川村 輝杉浦 義文丸橋 珠樹羽山 伸一
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抄録
【背景】千葉県では、房総半島先端で野生化し拡大するアカゲザルおよびそのニホンザルとの交雑個体群が在来のニホンザル個体群と交雑することが危惧されてきた。千葉県が2013年度に実施した調査では、鋸南町の群れで多数の若齢交雑個体が確認された。国は2014年6月に外来生物法を改正し、政令によりニホンザルと外来マカクの交雑個体を排除すべき特定外来生物に指定した。こうした背景から、房総半島におけるニホンザルの交雑状況を把握し、排除に向けた対策を講じることはニホンザルの保全、生物多様性を保護するために喫緊の課題である。千葉県の事業に加え、環境省も2013年度から房総半島の交雑状況調査に着手している。【方法】本研究では、交雑の進行状況を把握するため、新たな遺伝子ツールを開発し、未調査のニホンザル個体群で交雑状況を検査した。対象群は、君津市、富津市、勝浦市に生息する6地域個体群で、2015年3月末時点までに84個体を検査した。捕獲個体から血液を採取し、以前から分析している種判別に有効な血液タンパク質、ミトコンドリアDNA、Y染色体DNAとともに、常染色体のSTR(マイクロサテライトDNA)についても種判別標識として有効なものがあるかを検討した。【結果・考察】この研究により、交雑判定で2種類のSTR標識の有効性が確認でき、これらを加えて各個体群の交雑度を推定したところ、6個体群中4つが外来種由来の遺伝子をもつことが判明した。いずれも外来種由来の遺伝子の割合は低く(遺伝子カウント法による個体群交雑度の推定値で4.5~8.3%)、若齢個体以外でも低い程度に交雑したサルが認められた。これらの結果は、広い地域に外来遺伝子の浸透が進み、形態特徴からの交雑判定が難しくなると予想される交雑程度の低い個体が増えていることを示唆する。
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© 2015 日本霊長類学会
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