抄録
タンザニア西部ウガラ地域の乾燥疎開林地帯でチンパンジー(Pan troglodytes)の泊まり場選択の季節変化を調べた。この地域は落葉林が面積の80%以上を占め、他には常緑林と草地が点在している。現地調査を1994年から2012年にかけて行い、488kmの踏査ラインから30m以内に379個のチンパンジーのベッドを発見した。ベッドの位置はGPSで記録した。次に、GISを利用し踏査ラインを中心に片幅30mずつのバッファーゾーンを作成した。その踏査ルートのバッファーゾーンを,縦方向に60m間隔で区切り60m四方の区画を作成して、ベッドを含む区画と含まない区画の環境が雨季と乾季でどう異なるかを調べた。
その結果、(1)乾季雨季共に、ベッドを含む区画はベッドを含まない区画に比べて常緑林の割合が高かった。(2)乾季にはベッドを含む区画はベッドを含まない区画に比べて傾斜が激しかったが、雨季にはベッドを含む区画はベッドを含まない区画に比べて傾斜が緩やかだった。(3)ベッドは常緑林に近い場所に多く作られており、常緑林から離れるにつれてベッド数は減少した。(4)乾季は雨季よりも常緑林とベッド間の距離が短かった。ウガラ地域にはライオン(Panthera leo)やヒョウ(Panthera pardus)等のチンパンジーの捕食者が生息している。チンパンジーは樹高が高く樹木密度の高い常緑林を泊まり場とする事で捕食される危険を減らしていたのかもしれない。また本地域は乾季が長く、乾季には支流の多くは干上がって水溜りが点々と残るだけとなる。チンパンジーは乾季には傾斜地や常緑林といった水場の近くを泊まり場に選択していたのかもしれない。