霊長類研究 Supplement
第31回日本霊長類学会大会
セッションID: P20
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ポスター発表
ヒト動脈硬化症のアカゲザルモデル作出のための基礎研究
日比野 久美子竹中 晃子鈴木 樹理森本 真弓釜中 慶郎
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抄録

京大霊長研のインド由来アカゲザルに、LDLR(低密度リポタンパク質レセプター)遺伝子のLDL結合領域にCys61Tyr変異を有する高コレステロール血症個体を14年前に見出し、昨年初めてF2世代でホモ接合型個体が生まれた。ヘテロ接合型成体6頭はコレステロール(CH)を含まない通常食下で血中LDL値及びt-CH(総コレステロール)値が有意に(p<0.001)高かったので、この家系についてヒト動脈硬化症モデルとなる可能性を検討した。動脈硬化を引き起こすのは高いLDL値のみでなく、HDL(高密度リポタンパク質)が影響し、LDL/HDL比>3.5、あるいはt-CH/HDL比>5.0であることが知られている。従って0.1%CH含有飼料を投与し経時的に血液検査を行いこの動脈硬化指数を超えるか否かを検討した。ホモ接合型1歳♀1頭、ヘテロ接合型成体♂3頭、成体♀2頭、1歳仔♀1頭、正常成体♂3頭について調べた。ヘテロ型では投与前においてヒト高LDL血漿基準値の140mg/dlと同じ平均143であったが、投与56日目には平均219となった。ホモ個体は250と最も高かった。56日目にLDL値は正常個体よりもヘテロ型では80mg/dl、ホモ型では120mg/dlも高くなった。ヘテロ型♂1頭(#1784)は6週間で動脈硬化指数LDL/HDL=5.7およびt-CH/HDL=6.1とそれぞれ目標値の3.5および5.0を超え、モデル作出の可能性を示した。しかし、他の個体ではHDL値が高く、目標値に達しなかった。ホモ個体では動脈硬化指数LDL/HDLは49日目に3.25にまでなったが、3.5を超えなかった。貴重なサルに影響が少ないよう0.1%CH食を投与したが、ウサギ、マウスなどの文献では0.3%、1%投与をして動脈硬化を作出しており、投与CH量を上げるとレセプターにより細胞内に取りこまれないLDLが血中に残り、HDLが高い個体でも動脈硬化指数LDL/HDLが高くなる可能性が示唆された。

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© 2015 日本霊長類学会
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