霊長類研究 Supplement
第31回日本霊長類学会大会
セッションID: P39
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ポスター発表
閉経後の高齢メスにみられる交尾行動と内分泌動態との関連-ニホンザル嵐山群からの報告
豊田 有清水 慶子古市 剛史
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抄録
ヒトを含む霊長類においては、性周期と同調しない形で起きる性行動が広く認められる。加齢に伴い卵巣機能が低下した高齢個体に見られる交尾行動もその一つである。ニホンザル(Macaca fuscata)では、おおよそ25才で閉経に至ることが知られているが、閉経以降も交尾行動が観察され、最終出産から死亡までの間に見られる高齢メスの交尾頻度は、若いメスの交尾頻度と差がないとの報告もある。本研究では、繁殖寿命を終えた老齢メスニホンザルの閉経後の交尾行動に着目し、直接観察による行動記録と、糞サンプルを用いたホルモン分析によって、交尾行動の発現と内分泌動態との関連を分析したので、本発表にてその結果を報告する。京都市嵐山で餌付けされているニホンザル嵐山群のサルのうち、一般的に閉経年齢とされる25歳以上の高齢メス14頭を対象とし、観察された交尾行動を記録すると同時に、糞サンプルを採取した。観察期間は2013年9月7日から2014年2月21日までの144日間で、総観察時間は802.0時間であった。採取した計746個の糞サンプルから、酵素免疫測定法により糞中性ホルモン代謝物であるEstrone conjugates(E1C)とPregnanediol glucuronide(PdG)量を測定し、排卵の有無を推定すると同時に、交尾行動の生起との関連を分析した。結果、14頭のうち4頭を除く10頭で観察期間中には排卵が起きていないと推定され、このうち8頭で計223例の交尾行動が観察された。糞のサンプリング頻度や観察例数の問題により、5頭においては統計的分析には至らなかったが、3頭においては観察された交尾行動とホルモンレベルとの間に相関はみられなかったほか、年齢や順位とも関連性は認められなかった。一方で予備的な分析の結果、閉経後の性的活動性は非発情期のオスとの社会交渉の頻度と関連する傾向が示された。今後、若い個体の交尾行動と比較することで、今回示された傾向が閉経を迎えた高齢メスにおける交尾行動の特徴として位置づけられるのかどうかについて詳しく検討していく。
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© 2015 日本霊長類学会
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