霊長類研究 Supplement
第31回日本霊長類学会大会
セッションID: P41
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ポスター発表
飼育下ヤクニホンザルにおける繁殖パラメーターの時間的変化
新宅 勇太
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抄録

飼育下にある個体では餌や気候などの条件の変化によって、形態や繁殖、行動など様々な面において野生個体との間に違いが見られることが報告されている。日本モンキーセンター(以下JMC)では、1957年よりヤクニホンザルMacaca fuscata yakuiの群れを飼育している。この群れでは母系の記録が残されていることから、飼育下の個体において形態的・生態的にどのように変化が生じるのか、時間的な推移の検討が可能である。演者は昨年の大会において、母系の家系に基づいて世代を区分し、下顎骨と大腿骨の形態についての比較を行った。その結果、オスでは世代を経るごとに形態、特に体サイズの変化が見られるのに対して、メスでは形態に世代間の違いがほとんど見られないことを報告した。この群れについての先行研究は、人為的な給餌により栄養条件が良くなることによって、オスは体の成長に、メスは繁殖パターンにそれぞれ影響が出ていることを示唆している。そこで本研究では、過去の飼育記録を基にして、繁殖に関わるパラメーターについて、母系に基づいて区分した世代間の比較を行った。その結果、初産年齢では正確な年齢の分かる2世代目以降ではほとんど違いは見られなかった。繁殖間隔については統計的には有意でないものの、第1世代に比べて第2世代は短くなり、以降の世代では次第に再び長くなる弱い傾向が見られた。

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© 2015 日本霊長類学会
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