霊長類研究 Supplement
第31回日本霊長類学会大会
セッションID: P42
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ポスター発表
大隅半島に生息するニホンザルの群れ密度の推定―ライントランセクト法とカメラトラップ法の比較―
藤田 志歩座馬 耕一郎竹ノ下 祐二浅井 隆之棚田 章成大羽 真理門馬 一平猪股 萌子三崎 尚子
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抄録

発表者らは、鹿児島県大隅半島の自然植生が連続する稲尾岳自然環境保全地域において、2013年より定期的にニホンザルの生態学的調査を行っている。これまでの調査で、大隅半島のニホンザルは、同じ照葉樹林帯の屋久島低地と同じく、個体密度は高いが、屋久島に比べて群れサイズが大きく、一方、群れ密度は小さいことが分かっている(座馬ら、第30回日本霊長類学会大会発表)。本発表では、2014年8月に行った調査から、ライントランセクト法およびカメラトラップ法による群れ密度の推定について比較検討し、報告する。ライントランセクト法による調査では、標高90~270mに走る道路15.7kmを7区間に分け、朝・夕各4時間の踏査を6日間で計9回、各区間を調査員が同時にゆっくり歩いて、目視した個体を性・年齢別にカウントした。また、カメラトラップ法による調査では、ライントランセクトに沿って各区間1カ所に2台ずつ赤外線カメラを設置し、3~5日間撮影を行った。その結果、ライントランセクト法では2つの群れを確認し、それぞれの群れの個体数は少なくとも95および124個体であった。また、カメラトラップ法では、7地点中3地点でニホンザルの群れが撮影され、撮影の日時と場所から2つの群れであることが分かった。ライントランセクト法とカメラトラップ法によって得られた推定群れ密度は同じであり、また、両方法を併用することによって群れの遊動についての情報が補完され、より確かな推定が可能となった。以上より、情報の少ない調査地において、短期間でニホンザルの群れ密度や分布を調べるには、ライントランセクト法とカメラトラップ法は有効であった。

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© 2015 日本霊長類学会
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