霊長類研究 Supplement
第32回日本霊長類学会大会
セッションID: B21
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口頭発表
マカク属霊長類の集団エキソーム解析によるニホンザルの集団遺伝学的解析
郷 康広辰本 将司豊田 敦今井 啓雄平井 啓久山森 哲雄伊佐 正藤山 秋佐夫
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抄録

本研究では、ニホンザル77個体とアカゲザル21個体(インド原産8個体、中国原産13個体)の計98個体を対象として、ヒトの遺伝子情報を元にしたSequence Capture法による、マカク属の全エキソーム解析を行った。ヒトの遺伝子情報(エキソン情報)を元にデザインされたプローブを用いたターゲットゲノムシーケンス法を用いても、アカゲザル全エキソン領域の90%以上(被覆度30倍以上)をカバーする高精度の配列データを得ることができた。この配列データを用いることで、約34.5万の一塩基多型(SNP)サイトを同定した。ニホンザルの固有の特徴としては、アカゲザルと比較して、ヘテロ接合度が低いことが明らかになった。また、これらの全多型データを利用して主成分分析(PCA)を行った結果、ニホンザルと2つのアカゲザル集団(インド群、中国群)の計3集団で明瞭なクラスターをそれぞれ形成することが分かった。さらに、系統樹による解析結果から、ニホンザルは、アカゲザル2群が分岐するよりも前に分岐したことが明らかになり、また、ニホンザルの種内においては、地域個体群ごとにクラスターを形成することも分かった。これらのことは、アカゲザルとニホンザルの種間、あるいは、ニホンザル集団内の固有な表現型形質が遺伝子レベルで記述できることを示唆しており、実際に、種間比較において、免疫関連遺伝子や嗅覚・味覚受容体関連遺伝子にニホンザルに特徴的な進化パターンを同定した。さらに、ニホンザル固有のナンセンス突然変異(31箇所)やフレームシフト変異(30箇所)およびミスセンス突然変異(2,618箇所)を同定し、現在、それらの変異の発現に及ぼす影響をRNA-seq法により網羅的な解析を進めている。

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© 2016 日本霊長類学会
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