ギニア共和国ボッソウのチンパンジーが国境を越えてリベリアの森を利用することがわかった。このことをきっかけに、2006年よりリベリア共和国ニンバ州にて野生チンパンジーの調査をおこなっている。パラはニンバ州にある小さな村だ。パラではボッソウ同様にチンパンジーをトーテムと考えている。地域の人々はチンパンジーを狩猟せず、むやみに殺したりしない。そのためチンパンジーも極度に人を恐れず距離をとれば直接観察することもできる。しかし人づけされていないため、追跡することはきわめて難しい。樹上でおこなわれるアブラヤシの杵つき行動は直接観察することができた。しかし地上での行動はなかなか観察できなかった。パラのチンパンジーの道具使用行動を明らかにするため、道具の残された地域にカメラトラップを仕掛けた。その結果、チンパンジーによる石器使用行動を動画として記録することができた。パラのチンパンジーは板根へ石を投げて大きな音を出していた。ナッツ割りはアブラヤシの種子だけでなくパンダの種子にたいしてもおこなっていた。事例数はまだ限られているが、本発表では撮影されたデータをもとにパラにすむチンパンジーの行動を紹介する。