霊長類研究 Supplement
第33回日本霊長類学会大会
セッションID: A04
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口頭発表
中間的な尾長のマカク3種の尾の動きとその機能の比較
*若森 参濱田 穣
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抄録

霊長目の尾長はひじょうに変異性が高いが,各属では種間変異は小さい。例えば,オナガザル属(グエノン)では頭胴長よりも長い尾,マンドリル属では短い尾が特徴となっている。一般的に,樹上性の種は尾をバランサーとして使用するため長尾となり,それが不必要な地上性の種は短尾となる傾向がある。テナガザル,オランウータン,ロリスなどは例外で,樹上性だが尾なしであり,これらは共通して枝をしっかりと握る,あるいは懸垂型の位置的行動を行う。一方マカク属では,同属内に短尾(相対尾長:頭胴長に対する尾長,2%)から長尾(124%)まで著しい変異がある。極端に長くも短くもない中間的な尾長の種も存在し,かれらが尾をどのように使用しているのかが注目される。相対尾長が35%~40%のアカゲザル(Macaca mulatta),キタブタオザル(M. leonina),アッサムモンキー(M. assamensis)の3種を対象とし,餌付け群の行動観察をタイ王国で行い比較した。フォーカルアニマルサンプリング法で,尾の位置(腰椎に対して水平,垂直,背伸,脱力)を位置的行動(座る,立つ,歩く,走る,寝そべる,跳躍,登る)との組み合わせで記録した。また,アドリブサンプリングでビデオ録画を行い,尾椎形態との関連性を検討した。尾の可動域(最大背伸角度)はキタブタオザルが最も大きく,アッサムモンキーが中間,アカゲザルが最も狭かった。アッサムモンキーでは尾の横振りが特徴的に見られた。位置的行動と尾の呈示位置の関係は種間で異なっていた。最大背伸角度の違いは,各種の尾椎形態を反映していると考えられる。最も背伸角度の大きかったキタブタオザルは,アカゲザルと比較して,近位尾椎が短く,数が多く,その椎体は上下方向に扁平である。アッサムモンキーの近位尾椎は,左右方向に扁平であり,左右振りに適している。これら3種は尾長が中間的であっても,尾をバランサーとして使用する場合もあれば,コミュニケーション(優劣関係の呈示)の意味合いを無視できない場合が考えられる。

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© 2017 日本霊長類学会
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