霊長類研究 Supplement
第33回日本霊長類学会大会
セッションID: A08
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口頭発表
福島第一原発災害後の福島市の野生ニホンザルにおける末梢血球数および骨髄造血組織の減少について
*山本 有紗吉村 久志山本 昌美加藤 卓也名切 幸枝石井 奈穂美落合 和彦近江 俊徳羽山 伸一中西 せつ子今野 文治川本 芳
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抄録

2011年3月11日に起きた東日本大震災に伴い,東京電力福島第一原子力発電所(以下,原発)が爆発し,大量の放射性物質が放出された。われわれの研究グループでは,2012年度に原発から約70kmに位置する福島市に生息する野生二ホンザル(以下,福島サル)と約400kmに位置する青森県下北半島に生息する野生ニホンザル(以下,下北サル)の血液学的検査を行ったところ,福島サルの赤血球数・白血球数・ヘモグロビン濃度・ヘマトクリット値が,下北サルと比べて低値を示していたことを報告した(Ochiai et al. 2014)。本研究では,2012年度から2016年度の5年間に捕獲された福島サルを対象に,同様のモニタリングを行ったところ,引き続き汎血球減少傾向が見られた。その原因の検討のため骨髄の組織学的検査を行った。その結果,骨髄組織中に造血細胞が占める面積の割合は,下北サルと比較し福島サルでは低値を示し,また経年的に減少傾向を示したため,骨髄造血組織の減少によって末梢血球数が低下していることが示唆された。

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© 2017 日本霊長類学会
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