ミャンマー中部を南北に流れるエーヤワディ河とチンドウィン河の流域には,脊椎動物化石を豊富に産出する新生代第三紀の陸成層が広範囲に広がっている。京都大学霊長類研究所では,ミャンマー国考古局と共同で同地域において後期中新世~前期更新世のイラワジ層を対象に,霊長類化石の発見を主目的とした古生物学調査を継続してきた。本発表では,2017年2~3月にマグウェー市の南方に位置するテビンガン地域で行った現地調査で発見した霊長類を含む動物化石群について予備的な報告をする。マグウェー地域では,2008年にフランスとミャンマーの共同調査隊がホミノイド類の化石を発見し,隣国のタイからみつかっていたKhoratpithecusの別種として報告している。マグウェー地域を含むイラワジ層は,火山性の堆積物がほとんど含まれていないため,これまで放射性絶対年代値は報告されていない。しかし共産する動物化石の産状から,後期中新世前半と考えられてきた。今回の我々の調査により,キリン科のBramatherium,ウマ科のHipparion,イノシシ科のHippopotamodonとPropotamochoerusの化石が発見され,年代推定の精度が向上した。パキスタン北部のシワリク層から見つかっている動物化石の出現年代と比較すると,テビンガン地域の地層は10-8 Maの年代になると考えられる。今回の調査で新たに発見された霊長類化石も,この年代に由来するものと考えられる。動物相から推測される古環境と合わせて,同地域の霊長類相の変化について予備的な解析結果を報告する。