霊長類研究 Supplement
第33回日本霊長類学会大会
セッションID: P02
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ポスター発表
ジェントルキツネザル3種の腸内細菌叢
*澤田 晶子CLARK Isabelle早川 卓志
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抄録

多くの小型霊長類が消化しやすい果実や昆虫を主食とする中,体重2kg前後でありながら竹食に特化したジェントルキツネザルは極めて異質な存在である。竹は年間を通じて利用でき,他種との採食競合を避けられるというメリットがある一方,繊維質で消化が困難であるというデメリットを抱えている。パンダのように大型化することで竹食に適応するという戦略をとらなかったジェントルキツネザルは非常に大きな盲腸をもつ。盲腸は腸内細菌が最も多く生息する場所であり,腸内細菌は食物の消化・吸収に密接に関連することから,特殊な腸内細菌を獲得することでジェントルキツネザルは竹食に適応したのではないかと推測した。本研究では,マダガスカル・ラヌマファナ国立公園にて同所的に生息する野生ジェントルキツネザル3種(ハイイロジェントルキツネザル,キンイロジェントルキツネザル,ヒロバナジェントルキツネザル)の糞を採取し,次世代シークエンサーで網羅的に細菌種を同定した。その結果,竹への依存度が最も高いヒロバナジェントルキツネザルは,他の2種とは明らかに異なる腸内細菌をもつことが明らかとなった。竹への依存度が大きく異なる環境条件(竹伐採地,飼育下)の個体との比較もおこない,採食生態と腸内細菌叢における類似性および相違点について議論する。

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© 2017 日本霊長類学会
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