苦味感覚は毒物認識に深く関与する感覚とされ,動物の生存に不可欠である。環境中には植物の二次代謝産物をはじめとした多様な毒物が存在し,動物は自身の食性に適応した苦味受容体(TAS2R)レパートリーを進化させてきたと考えられている。本研究では,キツネザル類の食性と苦味受容体の機能の関係を明らかにするために,植物の主要な二次代謝産物の一つであるβグリコシド類を受容する苦味受容体を対象にした。βグリコシド類はこれまでにヒトではTAS2R16で受容され,マウスではTas2r118(ヒトのTAS2R41のオーソログ)で受容されることが知られている。現在までにキツネザル類の苦味受容体の機能解析は行われていないため,キツネザル類でβグリコシド類を受容する苦味受容体は明らかになっていないが,これら2種類の受容体のいずれかで受容する可能性が高い。そこで本研究ではこれら2種類の苦味受容体の配列と機能について様々な食性のキツネザル類5種を比較解析した。これまでに,配列が報告されていない4種のキツネザル類の苦味受容体の配列をPCRとサンガー法によって決定した。そして,これらの配列を元にカルシウムイメージング法によって機能解析を行うための発現ベクターの作成を行った。本学会では,遺伝子の分子進化学的解析に加えて,カルシウムイメージング法によるタンパク質機能解析の結果を報告する。