霊長類研究 Supplement
第33回日本霊長類学会大会
セッションID: P28
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ポスター発表
群れ編成時にみられた飼育下チンパンジーの自傷行為
*廣澤 麻里藤森 唯市野 悦子星野 智紀坂口 真悟奥村 文彦
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抄録

日本モンキーセンターで飼育しているチンパンジー・アキラ(推定37才,♂)に,自傷行為を伴うスクリームが頻繁に観察されるようになった。初めに自傷行為を確認したのは2016年4月11日で,自咬による右手首皮膚の裂傷がみられた。2度目は同年5月15日,自咬による右手首皮膚の裂傷と右上顎犬歯のぐらつきおよび歯茎からの出血がみられた。いずれも2009年より同居を継続しているデンスケ(推定34才,♂)と屋外放飼場で過ごしているときに発生した。当時アキラとデンスケは交代で,それまで単独飼育をしていたマリリン(推定28才,♀)と数時間の同居をおこなっていた。この同居にともなって,分離・合流を短期間に繰り返していたことが個体間の関係を変え,アキラの自傷行為につながったのではないかと考えられた。アキラの自傷行為およびそれにつながるスクリームを抑えるため,同居のパターンを段階的に変化させ,スクリームの発生回数を記録しながらようすをみた。5月16日よりデンスケとマリリンの同居を止めた。アキラとマリリンの数時間の同居は継続し,それ以外の時間はアキラとデンスケの同居を続けた。しかし効果は認められなかった。7月28日よりアキラとマリリンの同居も中止し,それにともなう雄個体の分離・再合流をやめ,アキラとデンスケの終日同居を継続した。スクリームや自傷行為は依然として観察されたが,スクリームがみられない日も増えた。そのため,9月13日にマリリンを別グループへ導入するため他の施設へ移動した。アキラのスクリーム発生頻度は,マリリンが同施設にいた時期は1.63回/日だったが,マリリンが移動した後は0.83回/日へと減少した。現在はアキラが恐怖や不安,欲求不満などから気を紛らわせるように,給餌の回数やタイミングを調整して経過を観察している。

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© 2017 日本霊長類学会
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