霊長類研究 Supplement
第33回日本霊長類学会大会
セッションID: P41
会議情報

ポスター発表
淡路島ニホンザル集団における毛づくろいネットワークの分析
*貝ヶ石 優山田 一憲中道 正之
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

ニホンザル(Macaca fuscata)はマカク属の霊長類の中で最も寛容性の低い種であり,順位関係が厳格な専制的社会を形成している。しかし野生ニホンザル集団に見られる寛容性の程度には地域差が存在する。中でも淡路島に生息する餌付けニホンザル集団(以下淡路島集団)の個体は,採食場面において特異的に高い寛容性を示すことが明らかになっている。本研究では淡路島集団において毛づくろいネットワークを分析し,この集団で採食場面に見られる寛容性の高さが社会交渉場面においても見られるかについて検証した。淡路島集団(全333頭)の成体169頭(オス31頭,メス138頭)を対象に,スキャンサンプリング法を用いて毛づくろい交渉を記録した。観察期間は2016年5月26日から9月14日までの46日間で,合計163回のスキャンサンプリングを行った。全毛づくろいペアに占める血縁ペアおよび非血縁ペアの割合を調べた結果,淡路島集団では,血縁関係の分からないペアを除けば,血縁個体間よりも非血縁個体間でより多くの毛づくろいが生起していた。さらに社会ネットワーク分析により毛づくろいネットワークの構造を分析した結果,この集団では,一部の個体間のみで毛づくろいが起こるのではなく,様々な個体間で広く毛づくろい交渉が行われていることが示唆された。これらの結果は,一般的なニホンザルと比較して,淡路島集団での毛づくろいは血縁びいきの傾向が弱いことを示唆している。また淡路島集団では,3頭以上が同時に参加して行われる多頭毛づくろいが頻繁に生起した。本研究の分析から,多頭毛づくろいでは,1対1では関わらない相手とも毛づくろいが行われ,それにより毛づくろいネットワークがより均一な構造になっている可能性が示された。本研究の結果は,淡路島集団のニホンザルが一般的なニホンザル集団とは異なる毛づくろいパターンを示し,したがってマカク属の中でも寛容性の高い種に類似した社会構造を持つことを示唆している。

著者関連情報
© 2017 日本霊長類学会
前の記事 次の記事
feedback
Top