霊長類研究 Supplement
第33回日本霊長類学会大会
セッションID: SP02
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高校生ポスター発表
高崎山のサルはヒトをどう見ているのか?餌付けされたニホンザルのヒトに対する行動分析
*前山 葵松中 円来
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抄録

大分市にある高崎山自然動物園では,観光客は檻に入れられていないニホンザルを非常に近い距離から観察することができる。高崎山のサルがヒトをどのように認知しているのかを調べるために,「高崎山では,ヒト慣れの程度が高くなることによってニホンザルの行動に変化が起こった」という仮説を立てて,ニホンザルのヒトに対する回避行動や敵対的行動等の調査を高崎山群と宮崎県の幸島群で行った。サルがヒトに近づく際の回避行動調査では,高崎山群のサルは幸島群よりもヒトを警戒していなかったことから,ヒト慣れの程度が大きい高崎山群では,近づいてくるヒトは警戒の対象ではないと考えた。また,ヒトがサルに近づく際の逃避開始距離(FID)は子ザルよりも雌の大人ザルの方が小さかったことから,サルは成長過程でヒトが危険ではないことを学習し,警戒しなくなると考えた。また,近づいた人に対する敵対的行動等の調査結果から,ヒト慣れの程度が大きくなるにつれて,回避(ヒトが近づくと逃げる),回避(ヒトと視線を合わせない),威嚇(ヒトに対する敵対的行動),不干渉(ヒトに対して反応しない)と変化すると考えられた。さらに,餌撒き前の鳴き声の分析と行動調査から,高崎山の餌付けされたニホンザルは,利益につながるイモを撒くヒトを認知し,その動きを見ながらイモを撒くことを催促する行動を行うことで,ヒトに干渉していると考えられた。つまり,高崎山自然動物園に生息するニホンザルは,餌付けによってヒト慣れが進むごとに,サルの行動は「回避」から「威嚇」,「不干渉」へと変化したが,餌という利益に関係するヒトに対しては,イモコールを鳴くなど,餌を催促する干渉行動を行うようになったことがわかった。

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© 2017 日本霊長類学会
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