霊長類研究 Supplement
第33回日本霊長類学会大会
セッションID: SP01
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高校生ポスター発表
会津メダカから見る遺伝的攪乱~ご当地メダカを守れ~
*横山 思実
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抄録

キタノメダカ(Oryzias sakaizumii)は日本在来の淡水魚である。しかし,生息環境の悪化などにより,現在は絶滅危惧Ⅱ類に指定されるまでに個体数が減少した。さらに近年は,遺伝的攪乱の進行が新たな問題となっている。これは人為的な要因で交雑することに起因する。我々は,野生メダカが地域ごとに遺伝的な差異を持つことから,福島県会津地域に生息する野生メダカ(以後「会津メダカ」)に焦点を当て,遺伝的攪乱の調査を実施した。会津地域においても,かつて河川環境の回復を目的としたメダカ放流がおこなわれていた。また,観賞用や教材として大量に飼育されている緋(ヒ)メダカが,遺棄された可能性も考慮して,「会津メダカは外来メダカとの交雑により遺伝的攪乱が進行している」と仮説を立てその検証をおこなった。キタノメダカ・ミナミメダカ共にPCR-RFLP解析法に基づく系統分類で,計64タイプの亜種を同定する手法が確立している。(Takehanaら,2003)我々もこの方法を採用し,採取したメダカを解析して検証をおこなった。会津地域全域計27ヶ所を探索し,10ヶ所から52頭のメダカを採取・解析した結果,同一の採取地からは,全て同一のバンドパターンが確認できた。また,採取地間ではバンドパターンの相違が確認でき,6グループに分類された。これらの結果より,会津地域内においてミナミメダカが広く分布して野生化していると考えられる。攪乱の可能性が示唆された。野生の会津メダカ生息地として確認できた調査区も,同一水系に他域由来の外来種が近接して生息していることから,今後攪乱の可能性が危惧される。以上のことから,我々は会津メダカは他地域メダカによる遺伝的攪乱が進行している可能性が高いと結論づけた。

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© 2017 日本霊長類学会
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