霊長類研究 Supplement
第34回日本霊長類学会大会
セッションID: B10
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口頭発表
ヒト/チンパンジー/ニホンザルiPS細胞を用いた神経発生動態の比較解析
*仲井 理沙子北島介 龍之平井 啓久今井 啓雄岡野 栄之今村 公紀
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抄録

ヒトへと至る霊長類進化は,生物学上の大きな命題の一つです。中でもヒトの知性を考えるとき,大脳皮質の形成は,重要な発生進化生物学的イベントであるといえます。また,脳の発生はヒトとチンパンジーでも異なることから,脳表現型の違いを生み出す素因として発生期の神経幹細胞動態の種差が想定されます。しかし,ヒトとチンパンジーの神経発生および神経幹細胞(NSC)において,分子・細胞レベルでの「どのような」違いがあり,それらが「いつ」生じてくるのかについては,未だ明らかにされておりません。一方で,iPS細胞技術を用いることで,ヒト/チンパンジーの神経発生を培養下で再現し,非侵襲的に比較解析することが可能となりました。そこで,神経発生およびNSCのヒト特異的な発生動態・分子基盤を解明するために,ヒト/チンパンジーiPS細胞を用いた神経発生の分化誘導と解析に取り組んでおります。これまで,我々はチンパンジーのiPS細胞を作製し,NSCやニューロンへと分化誘導する手法を確立してきました。本誘導系では,培養1週間でiPS細胞からNSCを誘導することが可能です。そこで,この分化過程の遺伝子発現を継時的に調べたところ,iPS細胞から後期前部エピブラスト→神経外胚葉→神経板神経上皮細胞→神経管神経上皮細胞→NSCへと神経発生運命を段階的に辿ることが分かりました。現在は本誘導系における初期神経発生のトランスクリプトーム解析やニューロン分化能の獲得時期の解明に取り組んでおります。また,本誘導系をヒトiPS細胞に対して適用し,同様の分化誘導を試みております。今後はヒト/チンパンジーiPS細胞を用いた誘導系において比較解析を行い,ヒト特異的な神経発生動態や遺伝子発現の解析を行う予定です。また,我々はニホンザルiPS細胞を樹立し,同様の誘導系を用いたNSC誘導とニューロン分化にも成功しております。これを用いることで種間比較を発展させたいと計画しております。

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© 2018 日本霊長類学会
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