主催: 日本霊長類学会
会議名: 日本霊長類学会大会
回次: 35
開催地: 熊本
開催日: 2019/07/12 - 2019/07/14
オスからメスへの攻撃がオスの繁殖成功度を上昇させるとき,そのようなオスの攻撃を「性的威圧」と呼ぶ。これまでに多くの霊長類で性的威圧がみられることが報告されており,ニホンザルでも非交尾期に比べ交尾期にオスからメスへの攻撃が顕著に増加することが知られている。こうした攻撃はオスにとって利益となる一方で,メスにとってはコストとなるため,メスはオスからの攻撃に対する対抗戦略を進化させてきたと考えられる。本研究の対象である金華山島のニホンザルでは,交尾期に休息中のメスの凝集性が高まることが知られており,こうした休息時の凝集性がオスからの攻撃の回避に寄与している可能性が示唆されていた(佐藤, 1987)。本研究は,交尾期にあたる2018年の10月~12月と非交尾期にあたる2019年の2月~3月に金華山島B1群の6歳以上のメスを個体追跡し,オスからの攻撃と休息集団(少なくとも他の1頭の休息個体と3m以内に近接している休息個体の集まり)のサイズおよび構成個体を記録することで,交尾期における休息時の凝集性がオスからの攻撃に対する対抗戦略として機能しているのかを検討することを目的として行った。分析の結果,オスからメスに対する攻撃の頻度は,非交尾期よりも交尾期で高くなり,交尾期内においては群れ内の発情メス数が多くなるほど高くなった。また,休息集団サイズは,非交尾期に比べて交尾期に大きくなり,交尾期内においては発情メス数が多くなるほど大きくなった。これらの結果は,メスがオスから攻撃されるリスクに応じて休息時の凝集性を変化させていることを示唆している。また,休息集団サイズは,休息集団内に高順位オスがいるときに特に大きくなること,メスが休息時に高順位オスと近接していると他のオスから攻撃される頻度が低下する傾向があることから,交尾期においてメスがオスからの攻撃を回避するために高順位オスに近接した結果,群れ内の休息時の凝集性が高まっている可能性が示唆された。