主催: 日本霊長類学会
会議名: 日本霊長類学会大会
回次: 35
開催地: 熊本
開催日: 2019/07/12 - 2019/07/14
すべての生物は地球の自転と公転によって起こる日周と季節の変化に適応して高度を調節し,多くの霊長類でも日周と季節によって活動性が変化する。本研究では,ガボン共和国ムカラバ-ドゥドゥ国立公園に生息する昼行性・半地上性霊長類,マンドリル (Mandrillus sphinx) の集団を対象に,活動性の日周・季節変化について検討した。2009-2013年に行った計46回の集団追跡のGPSデータをもとに,一般化線形混合モデルを用いて遊動速度の日周変化と季節差を推定した。その結果,果実期と非果実期で日周変化パターンが異なるとするモデルがAICによる最適予測モデルとなった。両時期とも日中は継続的に遊動し続けるものの,果実期には速度が10時頃と15時頃に極大となる二山型を示したのに対し,非果実期では際立った速度変化の無いなだらかなパターンを示した。また,最適モデルを用いて推定した日遊動距離は果実期 (6.9 km) の方が非果実期 (5.7 km) よりも長かった。加えて,2012-2014年に行った自動撮影カメラ調査の映像データをもとに,カーネル密度推定法を用いて,集団の撮影頻度の日周変化を果実期と非果実期に分けて記述した。その結果,マンドリルはどちらの時期も6-19時の間にしか撮影されず,さらに果実期・非果実期の日周パターンは,直接追跡による集団遊動速度とよく似たパターンを示した。これは,遊動速度の時間変化が撮影頻度に影響を与えた結果だと示唆される。マンドリル集団は,熟果の果肉を主な食物とする果実期には各個体が活動を同調させて果樹間を移動することで,速くリズムある遊動を行うのに対し,一方で,食物の多様性が増して探索に時間のかかる埋土種子や昆虫などの重要性が増す非果実期には,集団内個体間の活動同調性が低下し,各個体がバラバラに採食と移動を繰り返しながら集団を維持すると考えられる。