霊長類研究 Supplement
第76回日本人類学会大会・第38回日本霊長類学会大会連合大会
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シンポジウム
非ヒト霊長類を用いる動物実験の研究倫理
中村 紳一朗
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p. 10-

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抄録

医科学を中心とした試験研究を目的とした、非ヒト霊長類を用いる動物実験の研究倫理の現状と問題点についてお話ししたい。ご存じの通り、動物種を問わず動物実験を行うには、国内法令、文書に従って機関内で承認された動物実験計画書に基づき実施する必要がある。さらに国際的な学会、論文に実験データを公表する際には、ARRIVE guidelinesなどへの準拠を要求される場合がある。多くのジャーナルがARRIVE guidelinesを採用するようになって以降、非ヒト霊長類を用いた研究の論文レビューの際、実験実施時の動物福祉への対応について問われる例が増えたので、自身のいくつかの経験を紹介する。この指摘は、機関の動物実験委員会による計画書の審査の際、国内の法令等に準じた審査にとどまり、(当時の)国際的な視点を欠いたことによって生じたと推定される。さらにこういった事例は、2020年に神経科学学会「神経科学分野における霊長類を対象とする実験ガイドライン」が発出されたこととも深い関係がある。このガイドラインでは、日本の試験研究用非ヒト霊長類の飼養状況が、国際的な状況から遅れを取っていることを前提に、年限を設けて1)ペア・グループ飼育を導入すること、2)獣医師による獣医学的管理を行うことを提言している。これら提言の意味は重要であり、猶予期間内は上述のような不備のある論文も、レビュー時の交渉次第で受理される可能性があるが、以降は受理の可能性が非常に少なくなることを示唆している。非ヒト霊長類を用いる動物実験を行う機関は早急に、人的、物的ならびに運用面について、国際的なレベルを目指した整備が必要とされる。

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© 2022 日本霊長類学会
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