霊長類研究 Supplement
第76回日本人類学会大会・第38回日本霊長類学会大会連合大会
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ポスター発表
逆相カラムを使って採取・保管された尿成分の安定性と回収率
毛利 惠子橋本 千絵柴田 翔平戸田 和弥清水 慶子
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p. 65-

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抄録

冷蔵・冷凍等の電気設備のない調査地において、ホルモン等を測定する目的で野生動物の尿サンプルを採取・保存する際は、その成分の安定性が課題である。これまで私共はろ紙を用いた尿保存法による成熟メスチンパンジーやボノボのエストロゲン・プロゲステロン代謝物の測定が排卵の特定に有効であることを報告したが、ろ紙自体の尿保持量が少ないこと等から、テストステロンやコルチゾールの測定は困難であった。本研究では、飼育下の成熟チンパンジーの尿を、逆相カラム中に長期間保存し、その有効性を確かめた。カラム保存と冷凍保存の尿中cortisol, testosterone, estrone-conjugates, pregnanediol-glucuronideを測定し比較したところ、両者の動態に違いはなかった。また、カラム保存した尿のコルチゾール量は冷凍保存の結果より高濃度であった。さらに、野生のメスボノボの尿を逆相カラムとろ紙で長期保存し、その溶出液中のステロイドホルモン量から排卵日の特定をしたところ、予想される排卵日に差はなかった。これらのことから、本方法は、従来のろ紙での保存方法では困難だったステロイドホルモンの測定にも有効な保存方法であることがわかった。

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