主催: 日本霊長類学会
会議名: 日本霊長類学会大会
回次: 38
開催地: 京都府
開催日: 2022/09/16 - 2022/09/19
p. 74-
COVID-19の原因ウイルスである SARS-CoV-2 は、2019 年 12 月、中国湖北省で最初に確認されて以来、瞬く間に世界中に拡散し、6 ヶ月以内に 200 以上の国と地域で感染が確認されるパンデミックを引き起こした。SAR-CoV-2 はコロナウイルス科の一本鎖 RNA+ 鎖ウイルスで、同科内では SARS-CoV-1 、MERS-CoV に次いで高い病原性をもつとされる。一般に、変異修復機構が欠如しているせいで、RNA ウイルスは DNA ウイルスや他の生物と比べ変異速度が速いが、コロナウイルスは RNA ウイルスとしては例外的に変異修復機構をもつ。それにもかかわらず、 SARS-CoV-2 はアウトブレイクから 1-2 年で多くの変異株を生み出し、感染を広げ続けるなど、速い速度で変異し続けている。そこで本研究では、SARS-CoV-2分子進化機構の一端を解明するため、 SARS-CoV-2 遺伝子に作用する自然選択の痕跡を探索した。オミクロン株など、いくつかの変異株では、スパイクタンパク質 (S) 遺伝子において、非同義置換に対する同義置換の比(KA/KS)が1より大きく、強い選択がかかったことが示唆された。また、遺伝子ごとに系統解析を行うと、互いに異なる系統関係が推定された。今後、各遺伝子について、機能ドメインなどのより短い領域で KA/KS 比を求めることで、より重要な領域が明らかになると考えられる。このことは、新たな変異株出現を監視する上で重要であり、またウイルスタンパク質やその製造を標的とした創薬にも役立つ可能性がある。