霊長類研究 Supplement
第76回日本人類学会大会・第38回日本霊長類学会大会連合大会
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中高生発表
行動観察からみた飼育ウミウの社会関係
金谷 旺次朗馬場 壮志北川 愛莉福田 王子大野 孝斗山内 健心津田 涼榎濱口 天弥三輪 玲温
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p. 83-

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抄録

岐阜県関市では3人の鵜匠の手により鵜飼漁法が行われている。使役されるウミウは茨城県で捕獲された野生種であり、若鳥のうちに鵜匠宅に運ばれ独特の漁法を教え込まれる。ウミウは人に慣れ難い生物であるが、日々接する鵜匠との関係は緊密である。コロナ禍により動物園での霊長類観察ができなくなった我々は、昨年5月から鵜匠の協力を得てウミウ13羽の行動観察を開始した。鵜飼には体の大きいオスが適しているため、1羽をのぞきすべてオスである。さらに11月、その年生まれた若鳥(シントリ・新鳥)2羽が群れに加わった。飼育ウミウは2羽を単位に同じ鵜籠の中で飼育される。このペアをカタライ(語らい)と呼ぶ。我々は、カタライ同士の動向や、シントリとその他のウミウの関係性に注目し観察を行ったが、外観による個体識別は困難であった。通年でも変化のない裸出部・嘴部・脚部の観察で得られる知見に加え、足につけたリボンによる判別を手掛かりにした観察を続けようやく識別が可能となり、同時に行動カタログの作成を行った。カタログ作りでは、特徴的な行動を抽出・命名・定義し、限られた観察時間の中でそれぞれの行動が発生した回数や時間、行動をめぐる個体間関係などを記録した。この方法により、個体間に生じる優劣や親疎等、飼育下のウミウ群の社会関係についての分析を進めることが本研究の課題である。個体識別や行動カタログ作成に関しては、林美里准教授(中部学院大学、公益財団法人日本モンキーセンター学術部長)の指導を得た。

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© 2022 日本霊長類学会
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