主催: 日本霊長類学会
会議名: 日本霊長類学会大会
回次: 38
開催地: 京都府
開催日: 2022/09/16 - 2022/09/19
p. 82-
動物界では広く、体温調節をするために休息場所の選好性がみられることが知られており、外気温と行動との関連には多くの霊長類で報告されている。たとえば、気象条件に応じて気温が低いときには日向で日光浴をしたり、暑いときには洞穴で涼んだりする。このように、個体レベルで見ると気象条件に応じて霊長類は自身の体温が快適になるように休息場所を変えている。そのため適した休息場所が限られると、競合する資源となりうる。これは、群れを形成する個体にとってコストである。しかし、この個体レベルでみられる場所の選好性が競合する資源となりうるのか、なりうるならば群れ個体の休息中の近接個体数(以下、凝集性)にどう影響しているのかは明らかではない。そこで本研究では、屋久島のニホンザルでの休息場面に着目し、外気温に応じた休息場所の選好性と凝集性が関連しているのかを解明することを目的とした。鹿児島県屋久島の西部海岸域に生息するニホンザルであるUmi-A群を対象に、2020年10月から2021年10月までの期間をデータ解析対象とした。外気温は、個体追跡中に気象計を用いて5分間隔で自動測定し、休息場所の選好性と凝集性についてのデータはオトナメス・ワカモノメス合計24頭を個体追跡したものを用いた。休息場所の選好性については、個体追跡中に1分間隔の瞬間サンプリングを行い、休息または毛づくろいの行動時にどの場所を選択したのかを記録し、凝集性は休息または毛づくろい中に5分ごとの追跡個体半径5ⅿ以内の周辺個体数を記録した。その結果、まず外気温に応じて休息場所に選好性がみられ、暑い時期には相対的に冷えた岩場を、寒い時期には相対的に暖かい地面を選好していることがわかった。そして、岩場と地面では凝集性が異なることが明らかとなり、選好場所と凝集性には関連があることが示唆された。