霊長類研究 Supplement
第76回日本人類学会大会・第38回日本霊長類学会大会連合大会
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中高生発表
ネパール料理店の一般市場への進出の可能性 -大久保地域におけるネパール人エスニック・ビジネスの現状分析-
吉田 千晴
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p. 86-

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抄録

在日ネパール人、日本人向けに北インド料理を提供するインド・ネパール料理店の全国的な増加が指摘される一方、北新宿一丁目、北新宿三丁目、百人町一丁目、百人町二丁目、大久保一丁目、大久保二丁目(以下、大久保地域と総称する。)では他地域では稀なネパール料理を中心に扱う料理店が多数展開している。本稿では、大久保地域のネパール人エスニック・ビジネスの現状、今後のネパール料理専門店の一般市場への拡大の可能性、そのためにどのようなエスニック戦略が有効であるのかを明らかにすることを目的とし、大久保地域でネパール料理を提供する27店のうち、9店に聞き取り調査を実施した。同胞相手では既に規模が頭打ちになっており、ネパール料理店というエスニック・ビジネスは全体として同胞相手のビジネスから日本人も対象としたビジネスへ緩やかに転換している。日本人は非日常を求めてネパール料理店に来店し、日本人向けに加工された北インド料理も提供する店の方が日本人の集客に成功していることが分かった。人的資本として日本語能力が重要だが、従業員はネパール人コミュニティで募っているため日本人従業員の居ない店が大半で、SNSの導入も遅れている。イベントへの出店等により日本人との社会関係資本を充実させること、よりエスニック財の独自性を強調したサービスを提供することが日本人の集客に有効なエスニック・ビジネス戦略であることが明らかになった。

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