霊長類研究 Supplement
第39回日本霊長類学会大会
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口頭発表
ニホンザル野生群におけるinfant handlingと毛づくろいの関係性
関澤 麻伊沙沓掛 展之
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p. 34

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抄録

霊長類のinfant handling(IH)では、IHの前にハンドラーが母親に毛づくろいをし、母親はハンドラーにアカンボウへの接触を許容するという、毛づくろいとアカンボウの交換が行われる場合がある。しかし、毛づくろいには周囲の警戒が疎かになる、自身の活動時間が減少するなどのコストも存在する。そのため、アカンボウが母親から離れている場合など、母親に毛づくろいを行う必要性のない場合、ハンドラーは母親に毛づくろいをせずにアカンボウに接触すると考えらえる。そこで本研究では、宮城県金華山に生息する野生ニホンザルA群を対象として、IHの前に行われる毛づくろいの役割について検証した。対象群を3年間観察し、観察期間中に生まれたアカンボウとその母親24組を対象に、誕生から12週齢まで約1000時間の行動データを収集・分析した。その結果、ハンドラーによるIHの前の毛づくろいは、母親とアカンボウが接触しているとき、およびハンドラーよりも母親の方が優位な場合によく行われていた。また、毛づくろいの時間は、血縁度が低いほど長くなっていた。これらの結果は、IHの前の毛づくろいはIHに必須ではないこと、ハンドラーがIHの前に母親に毛づくろいを行うかどうかは、アカンボウへの接触しやすさと、母親と自分との社会関係に依存してることを示している。

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© 2023 日本霊長類学会
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