主催: 日本霊長類学会
会議名: 日本霊長類学会大会
回次: 39
開催地: 兵庫県
開催日: 2023/07/07 - 2023/07/09
p. 34-35
甘味は炭水化物の指標であり、ほとんどの霊長類が嗜好性を示す味質である。しかし、近年の研究で葉食性の狭鼻猿類であるコロブス類はスクロースなどの天然の糖類に対する嗜好性が低く、甘味受容体(T1R2/T1R3)の糖感受性が著しく低下していることが明らかになった。そこで、本研究では、この現象が葉を主食とする霊長類系統に共通する味覚特性なのかを明らかにするため、コロブス類と系統的に遠縁な曲鼻猿類の中から葉食を特徴としながらも属ごとに葉への依存度が様々なインドリ科(Propithecus属, Avahi属, Indri属)を対象として、甘味受容体の糖感受性を細胞アッセイによって分析した。受容体の機能評価には、スクロースなどの天然糖類に加えて、人工甘味料やDアミノ酸を使用した。その結果、果実-葉食性(Frugo-folivore)のPropithecus属ではヒトなどと同じようにスクロースや人工甘味料、Dアミノ酸に応答が見られた。一方で、若葉を主体とする高度な葉食性傾向をもつIndri属とAvahi属では、一部の人工甘味料には応答するものの、天然糖類やDアミノ酸には全く応答が見られなかった。この結果より、葉食性霊長類では、遠縁な系統間で平行的に甘味受容体の糖感受性低下が起こっていることが示唆された。また、属間で一部の受容体領域を入れ替えたキメラ体や種特異的なアミノ酸残基の変異体を用いて、糖感受性に寄与するアミノ酸残基を探索した。その結果、Indri属とAvahi属それぞれについて、糖感受性低下に寄与するアミノ酸残基を同定した。本発表では、これらの結果を基に糖感受性低下のメカニズムをコロブス類と比較するとともに、インドリ科における甘味受容体の機能進化を考察する。