霊長類研究 Supplement
第39回日本霊長類学会大会
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ポスター発表
パタスモンキー単雄群における雌雄間距離の調整の性差
半沢 真帆森光 由樹
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p. 43

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抄録

霊長類を対象として、群内のほとんどの成体個体にGPS発信機を装着し、個体の速度や他個体との距離の経時的変化に着目した研究は、一部の複雄群を形成する種に限られ、単雄群では未だ皆無である。また、単雄群ではハレム雄が群れを先導している可能性もあるが、前述の手法を用いて、雌雄間の距離の調整における性差を検証した研究はない。本研究は、ガーナ・モレ国立公園において、2022年12月から23年3月の間、一群のパタスモンキーのハレムオス(オス)とオトナメス(メス)4頭にGPSを装着し、複数個体の遊動を同時モニタリングした。個体の位置情報は、7時から17時の間10分間隔で収集した。その結果、個体間距離については、オスメス間とメス同士で比較すると、前者の方が長いことが分かった。また、オスメス間の個体間距離と移動速度について、10分ごとの変化を見ると、メスはオスと離れた時にその後の速度はあまり上がらないが、オスはメスと離れると、その後速度が上がる傾向が見られた。オスの速度が上がると、メスとの距離は縮まるのか検証するため、オスの移動速度とその10分後のメスとの距離を算出した。その結果、予想と一致していた一方で、メスとの距離がより離れるというもう一つの傾向が認められた。よって、オスの方がメスとの距離を意識しており、メスと離れると急いで近づくか、何か他の要因によってさらに離れるという特性があることが分かった。また、この特性から、オスが群れを先導している訳ではないことが示唆された。

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