霊長類研究 Supplement
第40回日本霊長類学会大会
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口頭発表
連合形成の数理モデル
井原 泰雄
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会議録・要旨集 オープンアクセス

p. 43

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抄録
目的:動物の連合形成とは、闘争的・競争的文脈において、二者以上が共同して第三者に対峙する行動を指す。霊長類および他の一部の哺乳類で報告があり、典型的には、二個体間の闘争に遭遇した第三の個体が、どちらか一方を援助する行動として観察される。霊長類の雄による連合形成を分析するため、これまでにいくつかの数理モデルが考案されており、モデルの予測を野外で検証する試みもなされている。一方、これらのモデルは、実際に観察される連合形成の多様性を十分に説明できない、個体による高度に合理的な意思決定を前提としている、モデルの仮定の僅かな違いが結果を大きく左右するなどの点で、改善の余地を残している。本発表では、新たに比較的単純な三者連合ゲームを導入し、これらの問題点の解消を目指すとともに、連合形成による社会淘汰の可能性を検討する。 方法:霊長類の雄の連合形成を、三者連合ゲームとしてモデル化する。数理的解析により、保守的連合(優位二個体による劣位個体に対する連合)、革命的連合(劣位二個体による優位個体に対する連合)、架橋的連合(優位個体と劣位個体による両者の中間に位置する個体に対する連合)の形成条件を導く。また連合形成により、闘争力の弱い個体を有利にする社会淘汰が起こるための条件を特定する。 結果・考察:新たに導入した三つのモデルのすべてにおいて、保守的連合または架橋的連合が予測されるパラメータ領域が存在することが示された。一方、革命的連合が予測されたのは一つのモデルにおいてのみであり、このことから、革命的連合が起こるための鍵となる要因が示唆された。また、革命的連合が予測される場合には、劣位個体の期待利得が優位個体を上回ることがあり、社会淘汰の可能性が示された。これらの結果に基づき、従来のモデルの問題点を考察するとともに、連合形成による社会淘汰の可能性、および人類進化への示唆について議論する。
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