抄録
日本固有種であるニホンザルはヒトのモデルとして生物医学研究や進化生物学・生態学・形態学的にも重要な霊長類である。しかし、同じマカク属のアカゲザル(Macaca mulatta)やカニクイザル(M. fascicularis)では、高精度の全ゲノム配列があるのに対して、ニホンザルにおいては、発表者らが2018年に解読した精度の低いドラフトゲノム配列しかデータベースには登録がない状況にある。同じマカク属でもマラリア耐性やウイルス感染能の種差・系統差などが報告されており、研究の目的により最適なモデルが異なる可能性も示唆されている。そこで、本研究では、ニホンザルの研究利用促進を目指して、高精度な全ゲノム配列の決定を行った。ロングリード型シーケンサ由来のHiFiリードとNanoporeリード、DNA領域の空間的・物理的な相互作用を調べることのできるHi-C(Omni-C)リードを用いて、シーケンシングとアセンブルを行った。その結果、性染色体をそれぞれ含む2つのハプロタイプを同定し、ゲノムの精度を表すコンティグN50長はそれぞれ90.7 Mbp(X染色体を含むハプロタイプ)、74.7 Mbps(Y染色体を含むハプロタイプ)であった。また、従来のシーケンス・アセンブル手法では解読が難しいとされていたセントロメアやテロメア領域においてもほぼ完全な配列解読が可能となった。併せて、嗅覚・味覚受容体遺伝子解析やアカゲザル・カニクイザルとの比較解析結果に関して報告予定である。