抄録
日時
7/11 13:15 -15:15
会場
国際会議場第三会議室
企画者
豊田有(京都大学野生動物研究センター)
概要
本集会では、ヒト言語に内在する“多義性”や“曖昧さ”がどのようにして芽生えたのかについて、霊長類におけるコミュニケーションの多様性と社会構造の関係から考察する。「霊長類のコミュニケーションと”脳”:社会性を形作る大脳辺縁系回路」では、霊長類における社会性とコミュニケーションの神経基盤について概説し、コミュニケーションの多様さを支える大脳辺縁系ネットワークの役割について議論する。「霊長類の遊びにおけるメタコミュニケーション再考」では、攻撃的な動作を伴う社会的な遊びにおいて、相手へ友好的な意図を伝達するため動物が行なっているとされてきた「メタコミュニケーション」の概念を再検討し、非ヒト霊長類とヒトとの間に見られるコミュニケーション行動の連続性・非連続性を議論する。「ヒト言語の原理と特性」では、ヒト言語に内在する規則とそれに伴って生じる多義性・曖昧性について論じ、非ヒト霊長類との相違・類似を議論する。「ヒト間での言語コミュニケーション方略の違い」では、社会的コミュニケーションに困難を持つ自閉スペクトラム症者の言語運用の特徴に着目し、言語表現による情動伝達の文脈依存性とそのヒト間の異種性について議論する。最後に総合討論を通じて、コミュニケーションにおける『曖昧性』と社会の関係をサル・ヒトそれぞれの事例で比較し、我々の“ことば”の意味の多義性の獲得過程を考察する。霊長類学・神経科学・言語学・精神医学の若手研究者が領域横断的に連携し、既存の枠組みに新たな視点を投じることで、これまでの学術分野に変革をもたらすような新しい研究領域の萌芽を見出す会としたい。
予定(90分)
1. はじめに:豊田有(座長)(京都大学 野生動物研究センター 助教)
2. 「霊長類のコミュニケーションと”脳”:社会性を形作る大脳辺縁系回路」:木村 慧(東北大学 生命科学研究科 助教)
3. 「霊長類の遊びにおけるメタコミュニケーション再考」:壹岐朔巳(京都大学 白眉センター / ヒト行動進化研究センター 特定助教)
4. 「ヒト言語の原理と特性」:杉本侑嗣(大阪大学 人文学研究科 講師)
5. 「ヒト間での言語コミュニケーション方略の違い」:直江 大河(昭和医科大学 発達障害医療研究所 助教)
6. 総合討論