抄録
日時
7/11 15:30 -17:30
会場
国際会議場第三会議室
企画者
松本卓也(信州大・理)、清家多慧(椙山女大・人間学・ジェンダー研究センター/学振PD)
概要
タンザニアのマハレは、1965年に当時大学院生であった西田利貞がチンパンジーの餌付けを目的に調査を開始してから今年で60年を迎える。60年と言えば、人間では還暦である。この間、ベテラン研究者の死去や引退による代替わり、タンザニアの国内事情の変化、日本の国力の相対的低下(円安)、学生などの若手研究者の減少、そしてまだ記憶に新しいコロナ禍など、マハレでの調査はさまざまな困難に面してきた。そうした中で、細々とながらも、これだけの長きにわたってフィールド研究が継続できている例は、世界的に見ても稀有である。
周知のとおり、マハレの初期の研究では、チンパンジーの社会構造の解明が中心的な課題であった。その後も長い間、研究対象はほぼチンパンジーのみであった。一方、この10年ほどは同所的に生息するヒョウやアカオザルを対象とした研究が精力的に展開されているし、チンパンジーやその他の動物の研究にも新たな手法の導入が試みられている。本自由集会では、そうした比較的最近のマハレでのフィールド研究の動向を紹介するとともに、今後の展望について議論する。
長期調査地だからこそできることは何か、そして長期調査地を維持するためにやってきたこと・目指すことは何かといった点について、他の調査地の研究者などとも意見交換できればありがたい。
予定
1. 中村美知夫(京都大・理学研究科)「マハレ調査60年史略―黎明期を中心に」
2. 松本卓也(信州大・理学部)「チンパンジーの行動観察へ還る―「私に回ったアフリカの毒」のその後」
3. 仲澤伸子(専修大・経営学部)「痕跡と写真からスタートした13年―とらえたヒョウの影」
4. 清家多慧(椙山女学園大・人間学・ジェンダー研究センター)「アカオザルにとっての“他種”とは―混群・捕食・人付け」
5. 川添達朗(里地里山問題研究所/東京外語大・AA研)「霊長類を中心とした動物相の多様性と相互作用―マハレにおける調査エリア拡張の意義」