霊長類研究 Supplement
第41回日本霊長類学会大会
会議情報

口頭発表
ニホンザルの取っ組み合い遊びにおける寝転がりの効果と使い方の年齢差
山碕 翼
著者情報
会議録・要旨集 オープンアクセス

p. 69

詳細
抄録
ニホンザルのコドモは取っ組み合い遊び(以下,遊び)を行うが,行動パターンが喧嘩と類似しているため,特に体格差のある異年齢間では成立が困難であり遊びの発生と維持には様々な工夫が存在すると考えられる。その内の一つが遊びの誘い掛け行動である。そこで,ニホンザルのコドモオス間の遊びの合間に発生する寝転がり行動に着目し,年齢による寝転がり方とその効果の違いについて調査を行った。2024年10月から12月の計110時間,京都府嵐山モンキーパークの1歳から5歳のコドモオス計28個体を対象とし,当該個体間で遊びが発生し次第ビデオ撮影をした。分析に際しては,開始前の寝転がり行動の有無,寝転がり方(その場で,離れながら,接近しながら),どちらの個体が仕掛けたか(一方的,双方的),悲鳴の有無(遊び破綻,成立)の4点とその年齢による違いに着目した。相手に対する自分の関係(年下,同年,年上)分類において,遊び開始時に自ら仕掛ける割合は年下>同年>年上の順となった。また,一方が寝転がった後はもう一方が仕掛けて遊びが始まることが多かった。また,年長個体ほど,一方的仕掛に比べ寝転がりの頻度が高かった。年少個体ほど離れながら寝転がりが多く,年長個体ほどその場寝転がりが多かった。年長個体の寝転がりほど,相手からの仕掛けを誘発しやすかった。これらのことから,寝転がり行動は遊び開始時において相手からの仕掛けを引き出すうえで重要な役割を持っており,更に寝転がりの頻度と寝転がり方,およびその効果には年齢による差が存在し,年長個体は寝転がりを年少個体との遊びにおける誘いかけ行動として有効に用いている可能性が示唆された。
著者関連情報

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top