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日本の霊長類学は,第二次大戦後すぐに世界に先駆けて人間社会の由来を探求する学問,すなわち,「人間とは何か」,「人間社会の由来はどのようなものなのか」といった課題を,人間と人間以外の霊長類の諸特徴を比較することで探求する学問として出発し,これまで多くの分野で世界をリードする成果を上げてきました。そして本学会は,こうした成果を公開シンポジウムや公開講演会を通して,広く社会に還元する活動を継続して行ってきました。ここ数年の本学会が主催した公開シンポジウム等のテーマは,多岐にわたっていますが,最初期の課題であった「人間性の解明」という点にストレートに切り込んだものはここ数年ありませんでした。そこで,今回の大会が「人間になろう」という教育目標を掲げる椙山女学園大学で開催される点を活かし,「人間性の由来」を霊長類学やその周辺領域の研究成果から今一度見つめ直し,現時点でどれほど迫れるのかという問題意識のもとに本シンポジウムを企画いたしました。
本シンポジウムでは,人類学に関連する五つの学会と開催校である椙山女学園大学人間学研究センターから代表を出していただき,上記の問題意識に基づいた講演をしていただきます。このシンポジウムを通して,人間性の起源や現代社会における様々な課題と人間が根源的に持つ特徴との関連を広く皆さまに知っていただけたらと考えております。
13:30~13:35 趣旨説明
13:35~14:15 「身体化の人類学のために-自然主義とのねじれた関係-」
菅原和孝(京都大学大学院・人間・環境学研究科・教授,日本文化人類学会)
14:15~14:55 「身ごもりに始まる児やらひ」
刀根卓代(日本民俗学会)
14:55~15:05 休憩
15:05~15:45 「鏡と窓-サルとロボットから人間を考える-」
佐倉統(東京大学大学院・情報学環・教授,日本霊長類学会)
15:45~16:25 「人間性の神経基盤を探る-脳イメージング研究から-」
菊池吉晃(首都大学東京大学院・人間健康科学研究科・教授,日本生理人類学会)
16:25~16:35 休憩
16:35~17:15 「社会的存在としての人間の由来-共感と暴力の過去と現在-」
山極壽一(京都大学大学院・理学研究科・教授,日本人類学会)
17:15~17:55 「総合人間学への展望」
渡邊毅(椙山女学園大学・人間関係学部・教授,椙山女学園人間学研究センター)
17:55~18:00 閉会の辞