汽水湖の環境維持は, 湖への塩分浸入とそれに伴う湖水交換の程度に依存する. しかし, 低塩分の汽水湖は塩分浸入機構が複雑であり, 系統だった観測が必要である. 本研究では, 茨城県涸沼への塩分浸入区間を対象に, 船を往復させて捕らえた詳細な塩分空間分布の変化と, 多地点に設置した塩分計の長期連続観測結果から, 地形の凹凸の効果を含めた湖央までの塩分の浸入過程と, それに対する諸要因を示した. さらに, 60ヶ月におよぶ塩分観測値と潮汐および河川水位データを用いて, 塩分浸入の条件と頻度を求めた. 涸沼湖内への塩分浸入は潮差の大きい時に加え気象潮による平均海面上昇時に起こること, 浸入頻度は年に10回程度であることを明らかにした.