抄録
多摩川河口域を対象として大潮期における一潮汐間の流動特性と, それが懸濁態物質輸送に与える影響を検討した. 多摩川河口域の流動構造は, 基本的となる潮流と重力循環流に加え, 上げ潮時と下げ潮時に鉛直混合特性の非対称性が生じることで, 下げ潮時には傾圧的, 上げ潮時には順圧的な特徴を示すこと, 潮汐振幅の変化や流量の大小により流速分布や底面せん断力の性質は大きく変化することを示した. また懸濁物質輸送量もこれに連動して変化し, 標準的な大潮時には上流向き輸送, 潮位差が大きい大潮時には正味の輸送量が小さくなり, また流量が大きい大潮時には下流向きの輸送となることを示した.