抄録
2004年に瀬戸内海の近傍を通過し, 沿岸部に甚大な被害をもたらした6台風を対象として, 沿岸部や海上部の多くの地点で取得された観測風資料を空間補間することにより, 地形の影響を含む海上風の平面分布を高精度で推定したのち, これを入力条件とする各台風時の浅海波浪推算を行い, 複数地点の観測資料と比較した. 波浪推算資料が沿岸部の多くの地点における観測資料とよく符合するという結果は, 内海における波浪推算では地形の影響を受けた海上風を適正に評価することが最も重要であるという本研究の観点を支持する. したがって, 観測風の空間補間による海上風分布の推定法は, 波浪推算の精度を向上させるために有力な方法と言える.