抄録
日本社会には,
目に見えないバリヤーがいたるところに張り巡らされてある. この障碍に阻まれて社会の弱者は,
区別され差別され, 侮辱され, 虐げられている. 弱者は, 死に至ることもある. 小中高生のいじめ自殺や老老介護
殺人などの例がそれである. この現実を考慮せずに, 情報システム化を進めても, まったく意味の無いシステムが
生まれるだけであり, 問題解決に至らない. バリヤーは他者を知ることを, 直接的間接的に邪魔をしているのであ
る. 生きている他者に優しく振舞えるということは, その他者を良く知ることから始まる. 本論では, 破倫的社会
に横たわる, 無慈悲な現実制度の改革を図り, 倫理的な情報システムを確立するための人間中心アプローチの必要
性を訴える.