抄録
質的研究の代表的手法であるGTA(グラウンデッド・セオリー・アプローチ)は,KJ 法と類似性を持つ手法で
あり,しかも,KJ 法には見られない,過度の汎化を防ぐメカニズムを持っている.但し,GTA では,テキスト切
片に対する「ラベル」に概念(名詞)を用いる.本稿では,名詞を用いる米国生まれのこの手法は,主語中心言語
である英語を母語とする場合には良いが,主題中心言語である日本語を母語とする場合,使い難い側面を持つこと
を問題提起する.そして,1) 係助詞「は」に注目して主題を取り出し,2) ラベルを動詞中心の文に変えて,3)プロ
パティに日本語に適した主題抽出手法である「目理方結」を採用した,日本語の特性に合致した修正版GTA を提
案する.